勢至菩薩って、どんな仏様?
勢至菩薩とは
勢至菩薩は大乗仏教で信奉される菩薩に属する尊格です。
勢至菩薩のサンスクリット語はマハースターマプラープタ(Mahā-sthāma-prāpt)で、摩訶娑太摩況跢と音写されます。サンスクリット語では「偉大な勢力を得たもの」という意味のため、大勢至菩薩、大精進菩薩、得大勢菩薩と漢訳され、略して勢至菩薩と呼ばれます。
勢至菩薩は『観無量寿経』に詳しく、阿弥陀如来の右脇侍として観世音菩薩と共に極楽浄土で衆生救済を担う「西方三聖」の一柱とされます。
極楽浄土での勢至菩薩は智慧の光で衆生を遍く照らし菩提心の種子を与え、また六道輪廻の地獄道、餓鬼道、畜生道の三悪道に落ち苦しむ衆生を救う力があるため「智慧第一」と称されます。
さらに『観無量寿経』より後に成立したと推測される『悲華経』では、阿弥陀如来の過去仏である無諍念(むじょうねん)王の第一皇子が観世音菩薩、第二皇子が勢至菩薩であると説き、釈迦の入滅後に成仏して善住珍宝山王如来になったとされています。
勢至菩薩の仏像の見分け方
勢至菩薩は仏像として単独で祀られることはほとんどなく、阿弥陀如来の右脇侍として観世音菩薩と共に阿弥陀三尊を形成します。
その姿は左脇侍の観世音菩薩と左右対称で表現されます。また観世音菩薩と区別するため宝冠中に智慧の光を放つ宝瓶を付ける場合があります。
勢至菩薩を象徴する三昧耶形は未敷蓮華です。
勢至菩薩の由来と成立
勢至菩薩と関連する阿弥陀如来は古代ペルシャ時代に同地で信仰されたゾロアスター教やミトラ教の神を仏教が取り込んだ仏様と言われています。また左脇侍の観世音菩薩はヒンドゥー教のシヴァ神が由来で、やはりもともと他宗教の神です
一方で勢至菩薩は観世音菩薩ほど他の仏典で描かれず、専ら阿弥陀如来と共に描かれるに過ぎません。『悲華経』でも観世音菩薩の弟という位置付け、仏像の表現も観世音菩薩と左右対称と特徴がありません。
ネパールのカトマンズで発見された観世音菩薩のタントラ※には、勢至菩薩のサンスクリット語「ハースターマプラープタ」は観世音菩薩の108ある名前の104番目の名前としています。このため勢至菩薩は『観無量寿経』の成立過程で、観世音菩薩を基に便宜上新たに創造した菩薩と考えられます。
※聖典のこと。
勢至菩薩と日本
勢至菩薩は日本で信仰される菩薩の中ではかなりマイナーな部類に属しますが、日本の浄土宗の開祖法然上人の幼名が「勢至丸」だったため、その弟子・親鸞は大勢至菩薩が法然の本地(本来の姿の意味)という立場を採っています。
また江戸時代に成立した干支の守護本尊では午年を司ります。
勢至菩薩のご利益
『観無量寿経』によれば、頭上の法瓶から智慧の光を放ち邪悪や障害を取り除き、無上の悟りに導くとされています。
勢至菩薩の真言
唵 三 髯髯 索 娑嚩賀
勢至菩薩が安置されている主な寺院
京都府 知恩院 勢至菩薩坐像(国重要文化財)
コメント