降三世明王 役割/仏像/由来/ご利益/寺院など詳しく解説 

コラム

降三世明王って、どんな仏様?

降三世明王とは

降三世明王(こうざんぜみょうおう)とは大乗仏教の密教で信奉される明王の尊格です。サンスクリット語ではトライローキヤ・ヴィジャヤ(Trailokyavijay)と呼び、「三界の勝利者」という意味です。。

密教では降三世明王は人の煩悩の根源である貪(どん)・瞋(しん)・癡(ち)の三毒、および欲界・色界・無色界の三界を降伏する明王とされます。そのため、降三世明王、勝三世明王、聖三世などと漢訳されました。

降三世明王は不動明王と同じ五大明王の一柱で、阿閦如来の化身とされます。五大明王の中では不動明王に次ぐ地位を与えられています。

降三世明王の仏像の見分け方

降三世明王の仏像は三面八臂で表現され、顔面は憤怒相で三眼、肌の色は青。身に炎をまとい、左右の二腕で降三世印を結び、右手には三鈷杵、矢、剣、左手には三叉檄、弓、羂索といった武器を所持します。

また左足は大自在天、右足は大自在天の妻・烏摩妃(うまひ)を踏みつけ降伏させる姿で表現されます。

降三世明王の由来

仏教では降三世明王と勝三世明王は同体と見なされますが、胎蔵界曼荼羅では別尊として扱われます。また金剛界曼荼羅では孫婆菩薩と爾孫婆菩薩は、胎蔵界の降三世明王と勝三世明王の同体とされます。金剛界の名にある孫婆と爾孫婆はサンスクリット語のシュンバ、ニシュンバの音写です。

このことから降三世明王はヒンドゥー教の神話でシヴァ神と争ったシュンバ・ニシュンバの兄弟神が由来だと分かります。実際に降三世明王の真言にも、この兄弟神の名を唱えます。※降三世明王の真言を参照

この兄弟神はインドの聖典『マールカンデーヤ・プラーナ』に登場する悪神です。彼らは男性神からの攻撃には不死身という神通力を得てシヴァ神を天界から追放し、この世の全てを手に入れます。そこでシヴァ神は妻で戦の女神ドゥルガーに依頼しこの兄弟神を倒した逸話が残されています。

この逸話ではシュンバ・ニシュンバの兄弟神は女神ドゥルガーに敗北しますが、仏教に取り込まれる際にヒンドゥー教の神々に勝つ話に入れ替わっています。降三世明王が踏みつける大自在天はシヴァ神、烏摩妃はその妻のパールヴァティーが仏教に取り込まれた際の名前です。

シヴァ神には「三界を統べる神」の異名があり、これが降三世明王のサンスクリット語「三界の勝利者」の由来です。ちなみに烏摩妃に相当する女神パールヴァティーの憤怒形が、シュンバ・ニシュンバ兄弟神を倒した戦の女神ドゥルガーです。

降三世明王の成立

『大日経』では大日如来が仏教に従わない大自在天と烏摩妃の元に降三世明王を派遣し、力ずくで改宗させたと説きます。胎蔵界曼荼羅や金剛界曼荼羅共に降三世明王に関連する仏が描かれていることからも、『大日経』や『金剛頂経』が成立した7世紀中期に仏教に取り込り込まれたと考えられます。

降三世明王と日本

降三世明王を日本に請来したのは空海です。東寺の立体曼荼羅で五代明王の一柱を形成する降三世明王立像が日本で最古の作例です。以後、密教で五大明王を加持祈祷に使う「五壇法」の修法で降三世明王が祀られますが、単独像として信仰されるこことはほぼありません。

降三世明王のご利益

降三世明王の真言を唱えると、障魔はたちどころに遠ざかり、勝負に勝ち、病が除かれ、人から敬愛されると言われています。

降三世明王の五真言

オン 蘇吽婆スンバ 儞蘇吽婆ニスンバ ウン 嚩日囉バザラ ウン 泮吒ハッタ

降三世明王が安置されている寺院

京都 東寺  五大明王像(国宝)

京都 醍醐寺 五大明王像(国宝)

大阪 金剛寺 大日如来・不動明王・降三世明王坐像(国宝)

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