閻魔王 役割/仏像/由来/ご利益/寺院など詳しく解説

コラム

閻魔王って、どんな仏様?

閻魔王とは

閻魔王は大乗仏教で信奉される天部に属する護法善神で、地獄の盟主です。サンスクリット語ではヤマラージャ(Yama-rāja)で、閻魔羅闍と音写され、閻魔はこのヤマの音写です。ラージャは「王」を意味し、仏典により閻魔王、琰摩王、琰魔王、炎摩王、閻羅王、閻摩羅王など表記されます。

またサンスクリット語のヤマは本来の「双子」や「平等」の意味があり、双王、平等王、遮止、静良、可怖畏などとも漢訳されています。

閻魔王は日本の仏教では地獄の裁判官として死者の魂を生前の善悪の多寡で裁き、天国に行く者と地獄に行く者を振り分ける役目を担います。また閻魔の前で虚偽を働いても浄瑠璃鏡と呼ばれる鏡が生前の行いを映し出すため、即座に見破ると言われています。

さらに仏説で閻魔王は地蔵菩薩の化身とされ、地獄での苦役を終えた死者は最終的に地蔵菩薩に救済されることを暗示しています。

閻魔王の仏像の見分け方

日本での閻魔王の仏像は中国の唐服をまとい、頭に角が両脇に生えた「展角幞頭(ぼくとう)」を被り、顔は忿怒の形相で髯を生やし、手に笏を持つ姿で表現されます。

閻魔王の由来

閻魔王原は古代インド神話で最初の死者ヤマが由来です。その歴史は古く紀元前2000年の頃にはその名が知られていました。

ヤマは太陽神ヴィヴァスヴァットの息子で人間として生まれ、双子の妹ヤミーと結婚したとされます。ヤマは人類で最初の死者で、死の道を発見して冥界に辿り着き、そこで冥界の王として君臨します。そしてヤマと同じく死の道を辿り冥界に次々に来る死者を裁くようになったとされます。

ただし当初はヤマが住む冥界は天界にあり、当時は死者の理想郷とされていました。しかし時代が下ると冥界は地底に変わり、ヤマが死者を裁く面が強調され、悪人を裁き罰する神に変化しました。やがてヤマは死者の魂を縛り冥界に連行するといった、現代の死神に近いイメージになります。

ヤマの原型は人類最初の宗教、ゾロアスター教の聖王イマに相当します、インド・イランのみならず、北欧やキリスト教の冥府の描写も類型の話が多く見受けられます。

閻魔王の成立

ヤマが閻魔王として仏教に取り込まれたのは大変古く、紀元前3世紀頃に編纂されたと推定される初期大乗仏教経典『長阿含経』地獄品に「宮を構え閻羅王と称し地獄界に君臨するが、他の罪人と同様に火熱の責め苦を受ける」と説かれ、当初は罰を受ける側の存在でした。

時代が下り4~5世紀に成立した『具舎論(くしゃろん)』では「諸鬼は元々琰魔(えんま)王国から来た」「閻魔王は悪鬼の首領であり、閻魔羅界(或いは餓鬼世界)に住む」と冥界を統治していることだけを説きます。

さらに時代が下り『金光明最勝王経』では「閻魔は六道の餓鬼・畜生・地獄の三界を束ねる」にまで存在感が増し、東晋時代の翻訳僧仏陀跋陀(359~429年、ぶっだばったら)が漢訳した『佛説観佛三昧経』では「地獄に堕ちた罪人を裁く」姿が説かれます。

唐代に玄奘三蔵が漢訳した『瑜伽師地論(ゆがしじろん)』では「閻魔王は菩薩の化身として生前罪を犯した者に罰を与え悔い改めさせる者」に変化し、『大乗大集地蔵十輪経』や『大方広十輪経』では「閻魔王は地蔵菩薩の化身である」と定義されます。

一方、中国では死者の魂は泰山(山東省にある聖地)を神格化した泰山府君(たいざんふくん)の元へ行き、現世へ再び転生するために裁判を受けるという民間信仰が漢代から流行していました。仏教の閻魔王の存在が知られると、この泰山府君と習合します。

晩唐の頃には閻魔王を冥府の長とし、死者は冥府に十ある宮殿で逐一裁判を受ける内容を説いた偽経『閻羅王授記四衆逆修生七往生浄土経(預修十王生七経)』が作成されます。日本の閻魔王が唐服を着るのはこの経典が原型です。やがて経典の内容が中国庶民に広がり、閻魔王信仰が定着しました。

閻魔王と日本

日本には奈良時代に閻魔王を地蔵菩薩の化身とする『地蔵十輪経』が伝来し、閻魔王の存在は知られていました。しかし当時の日本は仏教に鎮護国家や五穀豊穣などの現世利益を求め、死後の世界の住人の閻魔王に関心はありませんでした。

平安時代になると、釈迦の教えが廃れた時代の到来を説く末法思想が貴族の間に広まります。天台僧・源信著『往生要集』で『預修十王生七経』の内容が世間に紹介されると、庶民の間にも閻魔王が治める仏教の地獄観が知れ渡るようになりました。

鎌倉時代に『地蔵十輪経』と『預修十王生七経』を合わせた偽経『地蔵菩薩発心因縁十王経(地蔵十王経)』が制作され、三途の川や賽の河原、渡し船の船場の懸衣翁(けんえおう)・奪衣婆(だつえば)といった日本独特の地獄観が形成されます。これにより閻魔王は庶民の間で定着します。

江戸時代、陰暦の1月16日と7月16日を地獄の釜が開く日と定め閻魔王の祭日としました。この日に閻魔王を祀る寺院にお参りをすれば日頃の罪が許され、厄除けや病気治癒のご利益を得られる閻魔信仰が流行しました。

閻魔王のご利益

閻魔は延命長寿、厄除け、病気治癒にご利益があります。

閻魔王が安置されている寺院

東京都 太宗寺   木造閻魔像坐像

東京都 善養寺   木造閻魔像坐像

東京都 華徳院   木造閻魔像坐像

京都府 六道珍皇寺 木造閻魔像坐像

コメント

タイトルとURLをコピーしました