釈迦如来って、どんな仏様?
釈迦如来とは
釈迦如来は大乗仏教で信奉される如来に属す尊格で、その名が示す通り釈迦が神格化した仏尊です。サンスクリット語ではシャカ・ムニ(Sākya-muni)で、音写で釈迦牟尼仏、釈迦文尼、釈迦牟曩などと表記されます。シャカ・ムニは本来「シャカ族の聖人」という意味です。
釈迦如来は釈迦(ゴーダマ・シッダールタ)が仏陀(悟りを開いた人のこと)となった姿を現した如来で、大乗仏教では釈迦如来も数多いる如来の一柱に過ぎないと解釈されます。そのため釈迦如来は過去にも存在し、釈迦は人として釈迦如来が現世に現れた姿です。
入滅※1した釈迦は現在も諸仏国土※の遥か西方・無勝荘厳(むしょうしょうげん)国・霊山浄土で説法をしているとされています。
※1.入滅…仏教用語で釈迦の死のこと。
※2.仏国土・・・それぞれの如来が治める国のこと。
釈迦如来の仏像の見分け方
一般的な釈迦如来の仏像は手を施無畏(せむいいん)印、左手を与願印の印相を結ぶ姿で表現されます。
釈迦の一生を表現した仏像も多く、赤子の姿で直立し右手の人差し指を天に向けた誕生仏、あばらが見えるほど痩せこけた姿の苦行仏、釈迦の入滅を表した横たわる姿の涅槃仏など、如来の中では比較的多様な仏像が作られます。
釈迦如来が三尊仏として表現される場合は、脇侍として文殊菩薩と普賢菩薩を従えます。
釈迦如来の由来
釈迦如来はその名が示す通り、仏教の開祖・釈迦が由来です。原始仏教では釈迦は現世で唯一悟りに到達した「仏陀」であり、過去の因果から生じる業(カルマ)を断ち輪廻転生の法から解脱した存在と位置付けられます。
そのため仏教に帰依した者は釈迦と同様に解脱を目指して修行し、悟りを得た者は「阿羅漢」と呼ばれる聖者となります。
ところが釈迦の死後、仏教を信仰していた王たちが釈迦の仏舎利(遺骨)を奪い合い、各地に仏舎利を収めた仏塔が建立されます。もともと釈迦の教義は難解で常人では理解不能です。時代が経つと釈迦の教義が希薄になり、釈迦にあやかりたい人々が仏舎利を収めた仏塔を崇拝し始めます。
やがて人々の間で釈迦は超人という考えが広まり、仏塔以外に釈迦を象徴する仏足石や法輪、釈迦が説法をした菩提樹が崇拝の対象となりました。ただし釈迦の偶像の制作ははばかれ、長い間作られることはありませんでした。
釈迦の死後500年ほど経た紀元1世紀頃、パキスタンのガンダーラ地方に移住したギリシャ人が釈迦の伝承を元に初めて人の姿をしたギリシャ彫刻風の釈迦の彫刻を作り出します。
ギリシャ人は仏教を信仰していたたわけではなく、仏教を崇拝していたイラン系のクシャーン朝の王たちを喜ばせるために制作しています。そのためギリシャ神話の神々の彫像も一緒に彫られました。
これらの釈迦像は現在の釈迦如来の姿と同じく法衣をまとう修行者の姿で表現され、釈迦が超人であることを示す眉間の白毫(びゃくごう)や、光背を背負う表現もこの頃から始まっています。
これにより釈迦の神格化はますます進み、人々は釈迦の仏像を崇拝してその慈悲にすがることで輪廻の業から救済してくれる神と捉えられるようになりました。
釈迦如来の成立
仏教は3世紀後半にインドで最盛期を迎えます。しかし、仏教に脅威を抱いたバラモン教の中からヒンドゥー教が生まれ、仏教を凌ぐ勢力に伸し上がります。インド社会では因果で来世の運命が決まる輪廻転生の思想が根深く、仏教側も信徒を繋ぎ留めるため変革に迫られます。
その過程で生まれたのが大乗仏教です。大乗仏教は釈迦が否定した過去と未来の因果を釈迦に結び付け、釈迦は過去も仏陀として違う名で存在し、釈迦はこの世(娑婆世界)に出現した姿でり、死後も再び仏陀となり再降臨する三世(過去・現在・未来)諸仏の一仏であるという解釈がなされます。
釈迦如来の「如来」とはサンスクリット語のタターガタの漢訳であり、仏陀を指す十号(十種類の呼び名)の一つを漢訳したものです。そのため釈迦を呼ぶ際も、この呼称が使われています。これにより人間だった釈迦の神格化は確定し、以後大乗仏教内で様々な神通力を持つ神々が生み出されます。
釈迦が否定した業による転生が、釈迦如来として神格化したことで再び仏教で輪廻転生と関連付けられたのは皮肉としか言いようがありません。
釈迦如来と日本
釈迦如来の伝来
釈迦は仏教の開祖なので、その姿を模した釈迦如来像も仏教伝来と共に日本にもたらされました。日本最古の仏像とされる飛鳥寺の飛鳥大仏は釈迦如来を表現しています。伝承では605年に推古天皇に発願で制作が始まり、百済の仏師の手で609年に完成したとされています。
当初は釈迦三尊として祀られていた記録がありますが既に焼失し、現在残存している飛鳥大仏も一部以外は再制作したものです。それ以後日本に密教が伝来するまで釈迦如来は貴族の間で崇拝の対象であり、盛んに釈迦如来の仏像が製作されます。
釈迦如来と禅宗
禅宗は中国唐代生まれ、坐禅の修行を通じ自己の悟りを開くことを目指した仏教集団です。日本には鎌倉時代に伝来し、当時台頭してきた武士社会で広く支持されました。
仏教の開祖の釈迦自身、苦行の末悟りを開いた存在です。そのため禅宗では釈迦如来を本尊に据え、釈迦と同様に悟りの境地を目指すようになります。
禅宗でご本尊として祀られる釈迦如来像は両手の平を上にし、膝上に上下に組み合わせ瞑想を意味する禅定印を結ぶ姿が一般的です。
釈迦如来のご利益
釈迦如来を信奉すると煩悩が消え、不安や恐怖が取り除かれ、神通自在の境地に至れると言われています。
釈迦如来の真言
南麼 三曼多勃駄喃 婆
釈迦如来が安置されている主な寺院
奈良県 法隆寺 銅像釈迦如来及び脇侍像(国宝)
奈良県 飛鳥寺 釈迦如来像【飛鳥大仏】(国重要文化財)
奈良県 室生寺 木造釈迦如来像(国宝)
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