梵天 役割/仏像/由来/ご利益/寺院など詳しく解説

コラム

梵天って、どんな仏様?

梵天とは

梵天は大乗仏教で信奉される天部に属する護法善神です。サンスクリット語ではマハー・ブラフマー・ディーヴァ(Mahā-Brahmā-Deva)と呼び、摩訶梵、梵摩三鉢、婆羅賀摩、没羅含摩、梵摩などと音写されます。

サンスクリット語のマハーは「偉大な」、ブラフマーはヒンドゥー教の創造神「ブラフマー」のこと、ディーヴァは「神」という意味です

音写で用いた「梵」の字がそのままブラフマーを意味するようになり、梵天、梵王、大梵天、屍棄、世主、娑婆世界主と漢訳されます。ちなみにサンスクリット語でブラフマーの本来の意味は「力」です。

梵天は大乗仏教で重視する十二天の筆頭で、第二位の帝釈天と併せ梵釈と呼ばれることもあります。また千手観音二十八部衆にも属し、胎蔵界曼荼羅では金剛部院東門の南に描かれます。

仏説では釈迦が悟りを開いて成道した際に梵天が釈迦の目の前に現れ、衆生に釈迦が悟った法を広めるように強く請う話が説かれ(梵天勧請)、重要な役割を演じています。

また護法善神とし上方位を守護する方位神で、須弥山上空の色界・初禅三天の大梵天の梵王宮に住み、初禅三天を統べる存在とされます。

梵天の仏像の見分け方

梵天は『大日経疏』では四面四臂で髪を結って冠を戴き、右手に蓮華、数珠、左手に武器を持ち、もう一つの左手で印を結び、七鵝車に乗るとされています。日本の密教寺院ではこの姿に則り四面四臂の仏像で表現されることがほとんどです。また東寺の梵天像は梵天が座る蓮華座の下を4羽の鵞鳥が支えています。

一方で、興福寺に残されている梵天像のように一面二臂で中国の貴族と同じ感服を着た姿で表現されることもあります。

梵天の由来

梵天はサンスクリット語のブラフマーが示す通り、ヒンドゥー教の三大神の一柱で創造神ブラフマーが由来です。ブラフマーは普遍的な存在として哲学的に語られることが多く、ヒンドゥー教の最高神でありながら破壊と創造のシヴァ神や平和と維持のヴィシヌ神ほど人気はありません。

ヒンドゥー教のブラフマーの姿は仏典と同じく四面四臂で、手には蓮華、杓、念珠、経典を持ち、ハンサと呼ばれる白鳥に乗る姿で表現されます。

ヒンドゥー教のブラフマーの彫刻

梵天の成立

梵天が釈迦に法の布教を請願する梵天勧請の内容は紀元前4~前1世紀にかけて初期仏教の説話を集めた『阿含経』の『中阿含経』に収められており、かなり初期の段階で仏教に取り込まれた神です。

一方、方位神としての梵天はグプタ朝(3~5世紀)に成立したヒンドゥー教の聖典『マハーバーラタ』の内容と酷似しています。梵天は4世紀頃に『マハーバーラタ』を基に成立したと考えられる『金光明経』に詳しく、本来のブラフマーの姿からかなり変化しています。

梵天と日本

日本に仏教が伝来した際に梵天について説いた『金光明経』も伝わったと考えらており、飛鳥時代の仏教遺跡には『金光明経』の世界観が描かれたものが数多く残されています。

この頃の梵天像は漢服を着た唐人風の一面四臂で表現され、対となる帝釈天とほとんど見分けがつきません。ただし帝釈天は武闘神なので内衣に革甲冑をまとい区別が可能です。

平安時代に最澄や空海が正式な密教を日本に請来すると、日本でも立体曼荼羅を構成する十二天の一柱として四面四臂の梵天像が作られます。

ただし対となる帝釈天が武闘神として広く単体で信仰されたのに対し、梵天は十二天の最高神でありながら庶民の信仰の対象とはなりませんでした。やはり梵天は哲学的な要素が強く現世ご利益を望む庶民に理解が難しかったため人気が出ず、十二天の域を出ませんでした。

梵天のご利益

『護法大梵天修法』によれば煩悩や穢れを消し、無常の福徳を得て、三千世界の富を集め栄誉を与えるとされています。

梵天の真言

南麼三曼多勃喃ノウマクサンマンダボダナン 鉢囉闍鉢多曳ハラシャハタエイ 娑縛訶ソワカ

梵天が安置されている寺院

京都府 東寺   木造梵天坐像(国宝)

奈良県 唐招提寺 梵天立像(国宝)

奈良県 東大寺  乾漆梵天立像(国宝)

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